ソラジオトーク from OKAYAMA へようこそ 青いザリガニにオオサンショウウオ、スッポン、ナマズ、ヤリタナゴ…生物にまみれた生活をしています。人と科学の未来館 サイピア 岡です。
今回のテーマは、「月火水木金土日 日本の曜日」でしたね。
放送分で解説したように、1週間7日制はメソポタミアの古代帝国である古代バビロニアの時代(紀元前1900年頃~紀元前1595年)であると考えれています。
古代バビロニアでは、太陰暦である月の満ち欠けの周期を新月から29日、あるいは30日まで数え、7日ごと(7日目、14日目、21日目、28日目)を安息日としていました。
これが1週間の起源といわれています。
古代ローマでは、1日を24等分して1時間毎に5つの惑星と太陽と月とを繰り返しあてはめて呼び、この時代の天動説としては、地球から距離の遠い惑星順に土星・木星・火星・太陽・金星・水星・月の順番と決めました。
順番にあてはめて、24時間を5つの惑星に加えて月と太陽で支配していくので各時間を担当する星は、3つずつ、ずれているのがわかります。
なので、ある1時間を土星が、その次の1時間を木星が、という順番です。これを7日間にわたってあてはめたとき、日の最初の1時間を司る惑星をその曜日の名前としたのではないか、というのです。
日本は、中国文化の影響を大いに受けながらも、自国の文化と組み合わせて独自の発展を遂げてきました。
その結果、明治時代に西洋のグレゴリオ暦を採用する際、曜日名として七曜を取り入れることになったのです。
曜日と関係の深い惑星ですが、その名前はギリシャ神話の神々の名前がつけられています。
まず、太陽に一番近い惑星、「水星」水星は、商業・旅人の神であるヘルメスがあてられました。
神様の言葉を伝える伝令係と考えられ、神話の主人公になることはありませんが、あちこちに顔を出す、すばしっこいお調子者とされています。死者の魂を冥界に連れて行く役割と、逆に冥界から死者の魂を地上に戻す役割も担っていました。
三途の川という言葉もありますが、流れる水のイメージと伝令の神ヘルメスのイメージ ぴったりじゃありませんか?
水星と同じく地球と太陽の間を周る内惑星の金星は、明けの明星・宵の明星と呼ばれ、ひときわ明るいその輝きには思わず目を奪われます。
神々でも心を奪われてしまわずにはいられないほどの美しさを誇っていたといわれる 愛と美の女神アフロディーテが金星担当です。女神の中で最も美しいとされるその美貌を象徴するように、現代でも多くの名画が残されています。
しかし、そんなアフロディーテの夫が、最も醜いとされていた火と鍛冶の神 ヘパイストスであるというのがギリシャ神話のまた面白いところです。
そして、我らが地球は、大地の女神ガイアです。
母なる大地という言葉もありますが、その通りで、ガイアはひとりで天と海も産みました。
ちなみに地球の衛星である月は、狩猟の女神で弓矢の名手アルテミスとされています。今進められている月面着陸計画、アルテミス計画はこの女神さまの名前からつけられているんです。
地球のお隣さんの惑星、火星は、赤く輝く星にふさわしく 血をみるのが大好きな戦いの神、アレスとされています。
神々の王ゼウスの息子でありながら、この性格のために他の神々だけでなく、ゼウスからも嫌われていたほどです。神の中では、1・2を争うほどのイケメンで、金星のアフロディーテと愛人関係にあり、2人の息子ポボスとデイモスがいます。
火星の2つの衛星、Phobos(フォボス)、Deimos(デイモス)には、この2人の息子から名づけられていますが、フォボスは”敗走”、デイモスは”恐怖”の意味で、やはり戦いにちなんだ名前になっています。
続いて木星は、ギリシャ神話の最高神で全知全能の神、ゼウス。神々の頂点に君臨し、古代ギリシャでは運命も超越する神としてあがめられました。
一振りで宇宙を焼き尽くすと言われているほど強力な最強の武器”ケラノス(雷霆・らいてい)”を持っています。怒りの鉄拳は雷なんですね。
もう手がつけられないほどの女好きで、ガリレオ衛星と呼ばれる木星の衛星には、ゼウスが寵愛した神話上の人物 ①イオ ②エウロパ ③ガニメデ ④カリスト の名がつけられています。
ゼウスの父にして農耕を司る神クロノスが土星です。
天界を支配するゼウス、海を支配するポセイドン、冥界を支配するハデスの父であるクロノスは、ガイアから天として生まれた父のウラノスを倒し、実権を握りました。
ところが、
自分もまた我が子に倒されることを恐れ、産まれた子どもを次々飲み込んでしまいました。そんなクロノスの目をあざむいて生き延びた子のゼウスが率いるオリュンポスの神々との長きにわたる戦いの結果、冥府タルタロスに幽閉されます。
土星の衛星「Titan(タイタン)」はクロノスが巨神族(ティーターン)であったことから名づけられました。
時間を司る神であるクロノス(Khronos)とカタカナ表記が同じために混同されることが多いですが、土星と関係のあるギリシャ神話のクロノスとは違う神です。
時を司る神クロノスのほうは、サイピアのプラネタリウム投影機クロノス2の名前の由来となった神様です。
土星を過ぎれば、氷でできた惑星になります。天王星は全宇宙を最初に統治した天空神ウラノスです。
クロノスの父、ゼウスのおじいちゃんですね。
すいきんちかもくどってんかい(水金地火木土天海)最後の惑星は海王星です。海の名がつく海王星は、海の神ポセイドンです。
海の神としての印象が強いポセイドンは地震の神でもあり、三又の鉾を使ったその力は海や水だけでなく世界のすべての物質に及ぶほど強大でした。地震の凄まじさは、冥界の王ハデスが、「地球が裂けて冥界への道が開けてしまったのではないか」と危惧するほどだったと言われています。
はたしてポセイドンは怖い神、なんでしょうか?美しい髪をもつ娘が、海の神ポセイドンと恋に落ちました。
ところが、
戦いの女神アテナの神殿で密会していたのがバレて怒りをかい、自慢の美しい髪の毛は、みんな猛毒の蛇にされてしまい、顔までも恐ろしい顔に変えられ、その顔を見たものは、恐ろしさのあまり血が凍って、石になりました。
この悲劇の娘の名前をメデューサといいます。
メデューサの姉たちは、
「私たちはメデューサを愛しているからあなたの目をみても石にならない。ポセイドンだってメデューサのことを愛しているのだから石にはならないわ。だから会いにいきなさい。」
と言いましたが、変わり果ててしまったメデューサが、ポセイドンに会いにいくことはありませんでした…。
秋の星座の一つ、ペガスス座はメデューサの血から生まれでてきた神話が知られていますが、ポセイドンの子といわれています。
美しかった髪の毛が蛇に変わり、恐ろしい姿になってしまったメデューサ。誰もそばに近寄らなくなりましたが、ポセイドンだけは違ったようです。
さて、最後に惑星たちの中心、太陽ですが、ギリシャ神話における太陽神には、アポロン、ヒュペリオン、ヘリオスがいます。
まず、アポロンはギリシャ神話の中でもいろいろな話が残っていて、モテるわりに恋が成就しないこともしばしば…。ヘリオスと混同されることが多かったために太陽神に含まれることがあっただけで、本来は、音楽(竪琴)、予言、芸術、弓矢の神であるという見方もされています。
次のヒュペリオンは、天空神ウラノスと大地の女神ガイアの息子として生まれた神です。アポロンとは違い純然たる太陽神という見方がされている一方で、母であるガイアが神以外の魔物や怪物たちも何体か生んでいることから「ヒュペリオンは太陽神として相応しくないのでは?」という声もあります。
そして最後のヘリオスですが、大地を照らし、恵をもたらす太陽にふさわしく、人々に愛される神とされています。
ヘリオスという名前には「太陽」や「日」という意味が込められているため、ヘリオスこそが太陽の化身だと言っても過言ではないほどです。
ギリシャ神話は神の話でありながらも、怒ったり・泣いたり・恋したり・失敗したり、人間と同じようなことをしています。その親しみやすさが、何千年という時を越えて、今も語り継がれている由縁かもしれません。
以上解説は、60匹の子育てに奮闘中の、サンショウウオ60匹の子育てに大奮闘中の人と科学の未来館 サイピア 岡でした。
ソラジオトーク from OKAYAMAへようこそ 井原市観光交流課 の磯村です。
井原市美星町の星空保護の取り組みについての話です。
岡山県南西部に位置する井原市美星町は、“晴れの国”岡山らしく、晴天率の高さ、大気の安定、夜空の暗さなどが優れており、美星町は、天文ファンや天文学者の間で星空観測の好適地。
「星の郷(さと)」として親しまれてきた。
1980年代からは星空を観光資源として生かすようになり、1988年には国から「星空の街・あおぞらの街」に選定。
1989年 日本初となる『星空を守ること』を目的とした光害防止条例を制定。
「光害」とは、人工的な光により夜空が過剰に明るくなり、天体観測に弊害が起きたり、生態系への悪影響やエネルギーの浪費など、さまざまな問題が生じることを指します。
平成元年(1989年)美しい星空を守る井原市光害防止条例 前文を紹介させていただきます。
井原市美星町には、流れ星の伝説と、その名にふさわしい美しい星空がある。
天球には星座が雄大な象形文字を描き、その中を天の川が流れている。
更に、地平線から天の川と競うように黄道光が伸び、頻繁に流れ星がみられる。
また、夜空の宝石ともいえる星雲や星団は、何千年、何万年以上もかかってその姿を地上に届けている。
これら宇宙の神秘をかいま見ることができる環境は、井原市民のみならず全人類にとってかけがえのない財産となっている。
しかし、宇宙は今、光害によってさえぎられ、視界から遠ざかって行こうとしている。
人工光による光害の影響は、半径100キロメートル以上にも及び、人々から星空の美と神秘に触れる機会を奪うだけでなく、過剰な照明は資源エネルギーの浪費を伴い、そのことが地球をとりまく環境にも影響を与えている。
また、過剰な照明により、夜の安全を守るという照明本来の目的に反するのみならず、動植物の生態系にも悪影響を与えることも指摘されている。
近隣には主要な天文台が設置されているとおり、井原市美星町の周辺は天体観測に最も適した環境にあり、これまで『星の郷づくり』に取り組み、天文台も建設してきた。
そして、今後も多くの人々がそれぞれに感動をもって遥かなる星空に親しむよう、宇宙探索の機会と交流の場を提供することが井原市及び井原市民へ与えられた使命と考える。
このため、我が井原市民は、井原市美星町の名に象徴される美しい星空を誇りとして、これを守る権利を有し、義務を負うことをここに宣言し、この条例を制定する。
以上が光害防止条例の前文となります。
星空保護について市民が主体となって取り組んで行こうというい想いが強く感じられる宣言文であり、美星町が星空保護区認定への活動の原動力になっているのではないかと思います。
条例の制定後は、光害対策型のモデル照明の設置をはじめ、イベントやシンポジウムを通した星空保護の啓発活動などが継続的に行ってきました。
適切な照明で空を暗くしようという動きは、当時の社会状況にあって珍しい取り組みでした。
しかし、2010年代 町内の防犯灯として白色LED灯が普及しました。
そんななか、「照明のLED化によって町全体が明るくなり、星が見えにくくなっている」という危機感にも似た声が美星町の方から聞かれるようになった。
同時に、そこから星空保護区認定に向けた取り組みをスタートしていっきました。
まず認定を受けるには、白色LED灯を全て「光が上方向へ漏れない照明」へ交換する必要がありました。
街灯の交換するための財源の確保は課題でしたが、美星町観光協会が呼びかけてクラウドファンディングを実施したところ、目標金額に対し、約3倍の資金が集まりました。
屋外照明の基準をクリアする必要があるため、上部への光漏れがないこと(上方光束比ゼロ)、色温度を(ライトの色を)電球色(オレンジ色)にすること(3000K以下)
※K=ケルビン(色温度を指す単位)色温度が高い「青色」色温度が低い「赤色」
この条件に合致しながら必要な明るさと住民の安全性も確保できる照明器具を開発を井原市とパナソニック社とが共同で開発し、その際にはプレス発表を行うなど、メディアでも広く取り上げられ、新たな環境問題への対策として公民連携での取り組みとなり大変評価をされました。
2016年頃に星空保護区認定を目指して動き始めてから、実現に至るまで約5年半。
2021年には、世界の天文学者・環境学者らが中心となった世界最大のNPO団体「ダークスカイ・インターナショナル」により、星空の保護に力を入れてきた美星町は、「星空保護区®(コミュニティ部門)」の認定を受けました。
星空保護区としては日本では3例目、コミュニティ部門ではアジア初の認定となりました。
世界の都市部では、新たな環境問題としてその認知が広がっています。
まさに美星町の取り組み全体が評価された形。
星空保護区の認定は美星町民にとって「地域の誇り」である。
ここまで、星空保護区認定までの取り組みとなります。
ここからは、認定を受けた後の取り組みを紹介。
井原市美星町は、星空保護区の認定を受けたことで、地域の知名度が上がり、観光業の活性化にも繋がりました。
鉄道会社や旅行会社などと連携し「星空観光」としてパッケージ商品を生み出したり、市有ペンションを活用したワーケーション事業を実施しました。
2022年9月~11月には、倉敷市と福山市から美星天文台まで運行する「星空特等席」バスツアーを実施し、美星町の星空ガイド「星の郷、美星マイスター」が参加者へ星座や神話の説明を行ったり、地域の飲食店がイベントに出展するなど、夜間消費も生まれるツアーとなりました。
その他の取組で言えば、美星町が令和3年11月1日付で「星空保護区(コミュニティ部門)」に認定されたのを機に、昨年の11月を「美星☆星空月間」と銘打って、市内各地で光害啓発や星空環境保護意識の醸成を目的とした様々なイベントを行いました。
また、近隣・近県でも星・宇宙を生かした産業・観光・を絡めた取組が進められていることから、そうした一線で活躍されている関係者を招いたシンポジウムを開催し、次世代を担う子どもたちの星・宇宙への興味・関心を深めるとともに、本市美星町の美しい星空を守る取組を知ってもらうためのイベント等も行いました。
そして、最近では、全国の4つの星空保護区認定地と連携した取り組みへの挑戦に力を入れています。
沖縄県の西表石垣国立公園、東京都の神津島、福井県大野市の南六呂師と、美星町で共同のパネル展を実施したり、共同パンフレットやノベルティを制作したりと、スケールメリットを生かした取り組みを地域横断で色々進めています。
今後はさらに認定地が増える可能性もありますので、それらの地域とも連携して星空保護区の魅力発信に取り組んでいきたいと思っています。
最後になりますが、皆様にお知らせがあります。
光害の啓発、光害の悪影響とその解決方法、星空を祝うことを目的とし、毎年4月にダークスカイの呼びかけで「国際ダークスカイ・ウィーク」が世界規模で開催されています。
本年は4月2日~8日までを期間とし、「国際ダークスカイ・ウィーク」が開催されることとなっています。
この期間、4つの認定地と連携し、各地の星空保護区認定までの道のりや認定後のまちづくりなどを紹介する共同ポスターパネル展を行う予定です。
井原市では、4月2日(火)~12日(金)に井原駅構内にある井原市観光案内所でパネル展を行い、その後、場所を移して
4月15日(月)~26日(金)で美星町の星の郷青空市内にある星の郷観光案内所にてパネル展を行う予定です。
この展示を通じて、国内での星空保護区認定制度の更なる浸透と光害の啓発促進に繋がればと思っています。
ぜひこの機会に会場へお立ち寄りいただき、星空保護区の魅力を感じていただければ幸いです。
以上解説は、井原市観光交流課 の磯村でした。
ソラジオトークfrom OKAYAMAへようこそ 星取県 星空環境推進室長 田中です。
今回のテーマ、「星空がきれいな都道府県」についてでした。
放送分で解説したとおり、環境省などによる「星空の見やすさ」全国調査で、何度も1位に輝いた場所が、鳥取市佐治町にある公開天文台「さじアストロパーク」です。
ちなみに、2008年から2017年までに実施された20回の調査で、鳥取市にある天文台「さじアストロパーク」が1位になった回数は11回でした。
この全国調査、正式には「全国星空継続観察」と呼ばれるもので、全国で20カ所以上の定点観測地で星空を写真撮影し、夜空の暗さを測定するものです。
さじアストロパークには、口径103cm反射望遠鏡やプラネタリウムがあり、星や宇宙に関する展示コーナーも充実しています。本格的な天体望遠鏡を備えたコテージもあり、心ゆくまで天体観測ができます。
星取県では19ある市町村のすべてで『天の川』を見ることができ、県民の誰もが星空に親しむ環境にあるといえます。
美しい星空を守りたい。
そういった思いで星取県は、2017年、鳥取県星空保全条例を制定しました。
県の全域を対象とした星空保全条例の制定は、都道府県レベルでは初めてのことです。
条例は、星取県の「美しい星空が見える環境」を「県民の貴重な財産」として保全することを目的としており、強力なサーチライトで夜空を照らすことに制限を設けているほか、星空が特に美しく見える区域を「星空保全地域」に指定し、屋外照明の基準を定めています。
また、「星空保全地域」は県内に7地域あり、さじアストロパークがある鳥取市佐治町もその一つです。
「美しい星空に手が届きそう」そんな環境を楽しんでほしいという思いで、2017年から鳥取県は「星取県」を名乗っています。
さて、「晴れの国おかやま」も、星がよく見える「天文王国」です。天文王国おかやまと星取県の間をつなぐ、一人の人物がいました。
世界的アマチュア天文家で、「天体発見王」とも呼ばれた本田實(みのる)さんです。
本田さんは、1913年に現在の鳥取県八頭(やず)町に生まれました。鳥取県八頭町は、県の東南部に位置し、江戸時代から栽培されている花御所柿が有名です。
本田さんは、10歳ごろから星や天体観測に興味を持つようになり、自作の望遠鏡で星の観測をスタート。
1941年には、全国初の民間天文台である岡山県倉敷市にある倉敷天文台に着任しました。その後、太平洋戦争に出征しましたが、戦地で新しい彗星を発見したのは有名なエピソードです。
復員してからは、星が見えにくい満月の夜と雨の日を除き、休むことなく天体観測を続け、生涯において、なんと彗星を12個、新星を11個発見しました。
これは当時の現役観測者の世界記録でした。
1990年8月26日の夜、本田さんは倉敷天文台で観測データの整理中に永眠しました。
本田さんは、ふるさとの八頭町と倉敷市、両方の名誉市民として顕彰されており、天文王国おかやまと星取県の架け橋となっています。
中国山地を挟んで、鳥取側、岡山側の双方から星を見つめ続けた本田さんは、星取県と天文王国の可能性を早くから見抜いていたといえるのではないでしょうか。
鳥取県には、美しい星空に象徴されるような自然と調和した暮らし、人と人との絆、ゆったりと流れる癒やしの時があります。
まるで手が届きそうな満天の星空の下、日本一の鳥取砂丘や中国地方最高峰の大山、雄大な日本海が広がり、豊かな自然に恵まれています。
星のように輝くコメの新品種「星空舞(ほしぞらまい)」の栽培も盛んです。また、星取県から宇宙産業の創出にも取り組んでいます。
ポッドキャストをお聞きの皆さんも、ぜひ一度、星取県にお越しいただき、ゆったりと星空を見上げてみてはいかがでしょうか。
以上、解説は、星取県 星空環境推進室長 田中でした。
問題:光は1秒で地球を何周できるか。地球1周の距離を4万kmとする。
①1周
②3.5周
③7.5周
④10.5周
正解は…③7.5周
光速は秒速30万km。地球1周の距離を4万kmとすると30万km÷4万km=7.5周となります。
光速(秒速30万km)月までは、約1秒。太陽までは、約8分。αケンタウルス座までは、約4.4年(4.4光年)。
七夕といえば、織姫と彦星。二つの星の距離は、約15光年離れている。(光の速さだと15年かかる)
「雷」の音速・光速で距離を測る
○光速は1秒で約30万km ○音速は1秒で約340m(1マッハ)その差は、約100万倍の速さ。
「ピカッ!」1・2・3・4・5「ゴロゴロ」なら
340m×5秒=1700m 約2km周辺で落雷。
覚えていると使えます。
岡山天文博物館 粟野さん
ソラジオトークfrom OKAYAMAへようこそ 美星天文台 めざせ!天然天文学者の綾仁です。
江戸時代の日本では、私たちが今使っている星座ではなく、昔の中国で作られた星座を使っていました。
この中国生まれの星座、中国星座は昔の中国の社会構造が天にも反映されたようなもので、官僚組織のほか、人間社会の様々な事物、動物、人の星座が作られていて、ギリシア神話の世界がちりばめられたおなじみの星座とは、内容も星の結び方も大きく異なっています。
美星町にある星尾神社は、中世の豪族が病に倒れた時に「星」「尾」の2つの星座を夢に見て回復したことから創建されたといわれていますが、この2つの星座も中国星座です。
「星(せい)」は、うみへび座のあたり 「尾(び)」は、さそり座のしっぽあたり
放送で紹介した織姫星・ベガですが、私は、天体のスペクトル観測をよく行っていたので、その観点からお話したいと思います。
まず、「スペクトル」とは何でしょうか。
一般にはいろんな意味に使われたりする「スペクトル」ですが、天文の世界では、最も身近なところでは、天体からの光を虹に分けたものです。
光が波の性質を持っていることを高校の物理の時間に習った方もおられるでしょう。
波ですから、山と谷が、山・谷・山・谷と並んでいます。
山と、隣の山の間隔を「波長」と言いますが、虹色の中で、赤い方が波長が長く、青い方が波長の短い光です。
つまり、虹に分かれた光というのは、光を波長の長さの順に分けたものです。
目でみえる光は可視光線と言われますが、その中で、波長が長い方の赤い光より波長が長いのが赤外線、紫の光より波長が短いのが紫外線です。
波長が赤外線より長いとマイクロ波、それより長いと電波になります。
電波も、目で見える光(可視光線と呼びます)も、赤外線も、紫外線も、X線も。波長が違うだけで、それらをまとめて「電磁波」と呼んでいます。
可視光線も電磁波の一種です。
その電磁波を、波長の長短で分けたものが、スペクトルです。
可視光線(いわゆる目で見える光)なら、それが虹として目に見えるわけです。
白く見える光のスペクトルを見ると、紫・青から赤まで、いろんな色の虹に分かれて見えますが、逆にそれらの様々な色の光をうまいバランスで足し合わせると白く見える光になります。
白く見える光というのは、色んな色が混ざった光です。
天体からの電磁波のスペクトルを調べることによって、その天体について、さまざまなことがわかります。
可視光線でのスペクトルでは、温度の高い星では波長の短い青い光が波長の長い赤い光よりも強く、一方 温度の低い星では波長の長い赤い光の方が強いことがわかります。
そのために、スペクトルに分ける前の星の色は、温度の高い星は青白く、温度の低い星は赤っぽく見えます。
スペクトルは、星の温度をより明確に示すのです。
さて、ベガ(織り姫星)のスペクトルを調べると、可視光線の範囲では波長の短い光ほど強く、従って、ベガの表面は高温であることがわかります。
表面の温度が約9000度~1万度の、足し合わさった光が白くみえるため、白い星です。
さらにスペクトルを細かく見ると、虹色の中に、「模様」が見えます。
昔、理科や化学の時間に「炎色反応」の実験を体験した方も多いでしょう。
ガスバーナーの炎に食塩水をかざすと炎が黄色くなりますが、これは食塩のナトリウムがオレンジ色の光を放つからです。
ナトリウムランプの色もオレンジ色ですね。銅の化合物の溶液をかざすと青緑色の炎が現れます。
このように、元素に特有の色、言い換えると特有の波長の光が放出されます。
一方、明るい背景の光の手前に元素のガスを置くと、ガスがその元素特有の波長の光を吸収します。
ベガのスペクトルでは、赤い波長に1か所、青緑に1か所、周りより暗く見える部分があります。
これは、ベガの表面の大気に含まれる水素が、それらの波長の光を吸収して、そのような模様を作っているのです。
スペクトルを調べることで、その星の表面に、どんな元素が含まれているのかもわかるのです。
ちなみに太陽のスペクトルを見ると、水素の他に、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄などの元素による模様も見られます。
さらに、その星が、前後に動いていると、その速度に応じて模様の波長がずれます。そのズレを測ることで、その星の視線方向の速度がわかります。
物理などでは、ドップラー効果といいます。
※ドップラー効果とは、波の発生源が移動する、あるいは観測者が移動することで、観測される周波数が変化する現象のことをドップラー効果と呼びます。
スペクトルの観測は、手に取って調べることができない星々の成分、温度、速度 などを知る、重要な手段なのです。
以上解説は、美星天文台 めざせ!天然天文学者の綾仁でした。
2023年はドイツで世界初の近代プラネタリウムが発明されてから、100周年の記念の年です。
プラネタリウムとは、プラネット(Planets、惑星のこと)の動きを表現する機械という意味を含んでいます。
現代のプラネタリウムは、丸いドームスクリーンに実際とそっくりの星空を投影して、太陽や月、惑星の動きや、ひと晩の星空の変化や、季節による星空の移り変わりなどを再現することができる装置のことです。
プラネタリウムには二つのルーツがあるといいます。
惑星の過去、未来の位置を再現できる「惑星運行儀」と、球体に星の見え方を示してくれる「天体儀」です。
この二つを同流させる画期的なアイデア、近代プラネタリウムはドイツで発明されました。
今から100年前、20世紀が始まったころ、科学技術は急速な進歩を遂げていました。
写真や電話が発明されたり、レントゲンや抗生物質を使った新薬などを使って、多くの人が亡くなった病気の治療法が確立するなど、人々の暮らしは劇的に変化して、科学が切り開く未来に大きな期待を寄せられていました。
当時の科学技術の先進国はドイツでした。
1906年、科学技術を展示する博物館を建設しようとしていた、電気工学者の「オスカー・フォン・ミラー」は、最先端の天文学を紹介する目玉となる展示のアイデアに困っていました。
相談を受けたドイツのカール・ツァイス社は、レンズを使ったカメラレンズや顕微鏡作りでたいへん評価の高い会社でした。ツァイス社の技術者もこのリクエストには頭を悩ませたといいます。結果、惑星儀と天球儀の二つの展示をどこの国にもないサイズで大がかりに作ろうという案がまとまりかけます。
しかし、それに納得しない一人のエンジニアがいました。光学技術者の「ウォルター・バウアスフェルド」です。
得意なレンズ技術と映画の技術を応用して、丸いドームスクリーンに星や惑星を投影したほうが、装置も小さくてすむし、一度に大勢の人が体験できるはずだ。彼のこの画期的なアイデアはプラネタリウムと呼ばれました。
惑星の動きの法則を、歯車仕掛けの装置に組み込むという技術は、なかなかハードルが高いものでしたが、彼は4年でこの仕事を成し遂げます。
ドイツのミュンヘンで行われた関係者向けの試写会が世界最初のプラネタリウム投映といわれています。今からちょうど100年前、1923年10月21日のことです。
完成したプラネタリウムはツァイス1型と名付けられ、1等星から6等星までの4500個の星や天の川、太陽や月、5つの惑星の動きをドームに投映することができました。
このプラネタリウムという新発明は「奇跡」と絶賛され、翌年に行われた一般向けの特別公開では、プラネタリウムの星空を一目見ようと、数万人が行列をなしたといいます。
ツァイス1型はドイツの星空に限定されていたため、改良が加えられたツァイス2型では、地球上のあらゆる場所の星空を再現する能力を与えられました。これにより、世界の国々は競うようにプラネタリウムを設置していきます。
日本で初めてのプラネタリウムは発明から14年後の1937年。世界で25番目。大阪市電気科学館に導入されたのが最初でした。
一方で、オランダにも、興味深いエピソードがあります。
ドイツで近代的プラネタリウムが発明される、もっと前の18世紀。惑星直列がこの世の破滅をもたらすかもしれないというデマが広がりました。
正しい宇宙の知識を人々に伝えなければならないと考えた、オランダの実業家でもあり、熱心な天文家でもあった、「エイセ・アイジンガー」は、なんと自宅の天井裏を改造して、歯車などの機械仕掛けで過去、未来の惑星の位置を正しく再現することができる、自宅のリビングまるごと太陽系展示にしてしまったような大がかりな装置を発明しました。
彼はこれを「プラネタリウム」と名付けました。
「プラネタリウム」と名乗った世界で最初の装置となりますが、ドームスクリーンに星を映し出す近代的なプラネタリウムとは仕組みが異なるため、一般的なプラネタリウムとは区別されています。
しかし当時、科学の普及を目指して、一般市民に公開する目的で発明されたこの装置は科学博物館につながる文化の先駆けとして高く評価され、今年2023年、世界遺産に登録されました。アイジンガーのプラネタリウムは、今もオランダで公開されていて、現在の正確な惑星の動きを刻み続けています。
さて、世界でレンズを使ったプラネタリウムを作ることができる会社は、世界で5つとも6つとも言われていますが、そのうち3社は日本にあります。
いずれも高い技術が評価される会社で、日本はプラネタリウム先進国と言っていいと思います。
世界で最も大きなプラネタリウムは日本にあります。
名古屋市科学館のドームスクリーンの直径は35mあります。中国地方で最も大きい、倉敷科学センターが21mですから、その1.7倍ですね。
日本でも最も古い現役プラネタリウムは、明石市立天文科学館です。63年前のプラネタリウム投影機による星空投映が、今も人気を集めています。
このほか、新しい挑戦も始まっていて、プラネタリウムの投影機そのものがすでになくなっていて、ドーム全体がLEDディスプレイになっている次世代プラネタリウムもすでに2年前から公開が始まっています。
日本国内のプラネタリウムは47都道府県すべてに設置されていて、現在300近いプラネタリウムが可動しています。その数はアメリカに次ぐ、世界第2位です。
しかし、国土が狭い日本ですから、その密度でいえば、世界中のどの国と比べても群を抜いて高いといえます。
おそらく、外国の人に「プラネタリウムが最も好きなのは、どこの国民?」と聞かれたら「日本人でしょ」と答えるはずです。
ライフパーク倉敷科学センター 三島でした。
さて、本題の「重力波」の話に入る前に、リスナーの方からのご質問へ回答をしていきます。
「毎年同じ時期に流星群が見られるのはなぜですか?宇宙をただよう小さな岩石などが地球の重力に引き寄せられ、大気で燃え尽きるのが流れ星として見えることは分かります。ですが毎年同じ時期にたくさん見られるというのが疑問です。地球は同じ軌道を周回しているから、燃え尽きてちりが消えたらもう次は見られなくなるのではないかと思うのです。」
とのご質問をいただきました。ありがとうございます。
14日にはふたご座流星群があり、天気がよかったところでは1時間に50個くらいの流れ星が見えたかもしれません。毎年12月14日頃にピークを迎えるふたご座流星群ですが、質問は、なぜ、毎年同じ頃に流星群が見えるのか?ということですね。
おっしゃられている通り、流星群とは宇宙を漂う塵の列の中に地球が入っていき、地球大気に衝突したものが流れ星として見ることができます。
地球は太陽の周りをぐるぐると回っていますから、毎年同じタイミングで、宇宙を漂う塵の中に入っていくわけですが、疑問としては、なぜ、その塵が毎年補充されているか、ということでしょう。
おそらく質問者の方の考えとしては、この宇宙を漂う塵が動いておらず、地球だけが動いているので、前年に地球に衝突してしまえば、翌年以降は見られなくなるはず、ということだと思います。
答えとしては、この塵のほうも、太陽を周回しているから毎年新しい塵が地球にぶつかる、ということになります。そもそも、宇宙において、完全に静止する、というのはとても難しいことです。
なぜなら、地球や太陽などの重力が常に働いていますので、その場に留まるには、それこそロケット噴射のように重力に逆らう力の存在が必要になります。もちろんただの塵にそのような力はありませんので、常に太陽の重力によって動いている状態となります。ですので、流星群を作り出す宇宙に存在する塵は、流れる川のように太陽をまわる軌道をなし、地球がその塵の川・軌道に入っていく、というような状況を想像していただくとわかりやすいかもしれません。このため、毎年新しい塵が地球に衝突します。
では、今回のテーマである、「重力波」についてお話したいと思います。
放送分で解説したとおり、重力波とは、時空の歪みの伝搬のことです。
普通、高校などの物理で習う重力、とは、ニュートンが提唱した万有引力と呼ばれるもので、物が2つあったときに、お互いを引っ張り合う力のことを指します。
地球の重力、と言った場合は、例えば地球と人間の間に発生する引力のことを、重力、と呼ぶわけです。しかし、これが一般相対性理論では全く異なる説明となります。
一般相対性理論では、時空の中に質量がある物体が存在すると、その周りの時空が歪みます。この歪みこそが重力として感じられている、と説明されます。
なにが違うかよくわからない説明かもしれませんが、ニュートンの万有引力が空間を伝わる力であるのに対して、アインシュタインの一般相対性理論では、時空、の歪みである、とした点が大きく異なります。
普段の我々の生活の範囲では、万有引力も一般相対性理論も違いを感じることはないのですが、こと宇宙、非常に重たい天体の周りの様子を観察してみると、万有引力では説明できず、一般相対性理論を使わないと説明できないことが現れます。
一番身近な例としては、皆さんのスマートフォンにも内蔵されているGPSでは、一般相対性理論を使った時刻補正が行われています。
GPSは地球を周回する複数個の人工衛星に搭載された原子時計の正確な時刻を使って、地上の位置計測を行いますが、この原子時計は地球による時空の歪みの影響を受け、時計の進み方まで変わってしまいます。
このため、一般相対性理論を用いた時刻補正を適切に用いないと、正確な時刻が分からず、最終的な位置を決める際に大きな誤差となってしまいます。もし、一般相対性理論の補正を入れないと、GPSで計測する位置は1km以上ずれたものになってしまうことが知られています。このように、現実の宇宙はニュートンの万有引力でなく、アインシュタインの一般相対性理論が導く時空の歪みが支配していることが知られています。
そして、重力波とはこの時空の歪みの伝搬のことを指しています。
重力波を生み出す物質が、重たければ重たいほど、当然この時空の歪みも大きくなっていくのですが、その歪みを捉えるのは容易ではありません。
例えば、太陽よりもずっと重たいブラックホールの合体で生じる時空の歪みの量は、地球と太陽の距離を原子一個分だけずらす程度です。そんなわずかな量の変化を捉えてしまうのが、現代の重力波望遠鏡なのです。
さて、この重力波を観測できるとなにがうれしいのでしょうか?
現在の重力波望遠鏡で捉えられる重力波は、非常に重たいブラックホールや中性子星などが、2個ぶつかって合体するような非常に極端な状態のものになりますが、例えば中性子星の合体の場合には、多数の重たい元素が生成されることが予想されています。宇宙が誕生してすぐには、水素やヘリウムと言った非常に軽い元素が存在するだけで、例えば我々の体を作っている炭素や酸素、鉄などは存在しませんでした。これらの元素は星の内部で生成されて、星の一生の最後である超新星爆発を経て、宇宙に様々な元素がばらまかれたと考えられています。
しかし近年、超新星の観測などが進むにつれて、重たい元素、特に鉄より重たい金やプラチナなどの元素が、超新星爆発で作られる量だけでは全く足りていない、ということが明らかになってきました。そこでにわかに注目を集めたのが、中性子星の合体です。この現象でも、実は金やプラチナといった重たい元素ができることが予想されたのですが、これらを探す際に極めて重要となるのが、重力波の観測になります。
重力波望遠鏡は、我々が普段想像する望遠鏡とは、全く異なる仕組みの望遠鏡になります。
レーザー干渉計と呼ばれる技術を使って、先ほども述べた通り太陽-地球間の距離にして水素元素1個分程度の極めて小さい時空の歪みを検出しますが、この時の歪みの大きさや時間変化をつぶさに調べると、重力波を出した天体の重さやまで調べることができます。また、我々が普段使っている望遠鏡では、空のうち非常に狭い範囲しか観測できませんが、重力波望遠鏡では宇宙のほぼすべての方向を同時に観測でき、また、重力波が宇宙のどの方向からやってきているかも、大雑把ですが知ることができます。
さて、宇宙で中性子星やブラックホールの合体が起こると、地球では、まず最初にこの重力波が検出されます。重力波の観測からは、先ほど述べたとおり、ぶつかった天体の質量と大雑把な方角が分かります。
しかし、これだけでは本当に金やプラチナと言った元素ができているかを調べることはできません。そのため、重力波以外での追跡観測がとても重要になります。
重力波望遠鏡で重力波が検出されると、その情報は即座に世界中の望遠鏡と共有されます。
世界中の望遠鏡は、この重力波からの情報を頼りに、中性子星やブラックホールが合体してできた天体がないかをすぐに調べに行きます。中性子星の合体の場合、場所や星の環境によっても変わりますが、合体から数日程度は可視光などでも光ることが予測されており、その成分を波長ごとに詳しく調べることによって、本当に重たい元素ができているかを調べることができます。
実際に2017年に起こった中性子星の合体の事象の時は、直後に可視光で明るく輝く新星が発見され、またその波長ごとの特性から、本当に重たい元素が生成されている様子が観測されました。しかし、まだたったの1例しか観測には成功していません。
まだまだたくさんの観測が必要とされています。
実は、美星天文台もこの追跡観測プログラムに参加しています。
追跡観測のときに重要となるのが、新しく出現した星を速やかに探し出すシステムとなりますが、日本国内外の研究機関の十数台の大望遠鏡が撮影した画像は、実は私が美星天文台で開発している画像探査システムを使って新しく出現した星探しを行っています。世界中の天文台で撮った画像は1台のサーバーに集約され、過去に撮影された同じ場所の写真と比較して、新しい星が出現していないかを自動的に探し出します。
もちろん美星天文台101cm望遠鏡も、一般の方向けの公開が終わった後に、この観測チームの一員としてこのような最先端の研究観測を実施しています。
残念ながらまだ中性子星の合体の現場を観測できてはいませんが、いつかきっとくるその瞬間まで、日夜奮闘していきたいと思います。一般向けの観望会だけでなく、このような研究観測が行われているのが美星天文台の特徴の一つです。
これからも美星天文台をどうぞよろしくお願いいたします。
美星天文台 伊藤でした。
電子レンジはマイクロ波と呼ばれる電波に近い周波数を扱う電子機器で、実はこれが高速電波バーストに非常によく似た波形の信号を出す事がわかっています。
高速電波バーストは空の特定の方向から来ているのに対し、電子レンジからの信号は望遠鏡が空のどこを向いているかにかかわらず共通して見つかるため、これらを区別する事ができます。実際に電子レンジを使った実験が行われたそうです。
その結果、電子レンジをつけて加熱時間が完了する前に開けた場合にのみ、高速電波バーストのような信号が検出される事が確認されました。
もう一つのテーマ「宇宙の不思議:ダークマター」についてお話します。
「ダークマター」とは、日本語で言うと暗黒物質
この暗黒物質は、天文学的現象を説明するために考え出された仮説上の物質。
”質量を持つ”、"物質とはほとんど相互作用せず、光学的に直接観測できない”、"銀河系内にあまねく存在する"といった性質が想定される。
観測事実から間接的にその存在が確実とされるが、いまだ正体 不明の物質で、宇宙の星や銀河を作った立役者だと考えられています。
この発見がなぜ重要なのか?
ダークマターがなければ銀河がほとんど形成されず、私たち人類も生まれなかったかもしれません。われわれの身の回りにもダークマターは1リットル当たり約1個ほど存在すると考えられています。
しかし、いまだ実験的に直接捕えられていません。
ダークマターの間接的証拠はいつ発見されたか?
1930年代に、はるか遠くの銀河団を観測した天文学者がいて、その銀河が「激しいスピードでビュンビュン動いている」ということを発見しました。この激しいスピードは、望遠鏡では見えない重力源、つまりダークマターによるものだと考えられています。
ダークマターの有力候補は?
ダークマターの正体についてはいろいろな可能性が考えられていますが、その一つが素粒子と呼ばれる、極めて小さな粒子です。素粒子には知られていないものが複数あり、そうした未知の素粒子の一つである「ニュートラリーノ」がダークマターの有力な候補になっています。
ダークマターの候補として最近注目を集めているもう一つの候補に「原始ブラックホール」があります。
これは宇宙がビッグバンから始まった時に形成されたと考えられている、とても軽いブラックホールです。
原始ブラックホールの存在はまだ観測的に証明されていませんが、今回のテーマの一つ、「高速電波バースト」をつかって発見する事ができるかもしれないと期待されています。
ダークマターの直接観測は、現在の宇宙物理学の最も大きな課題の一つです。直接観測に成功すれば、その正体を解明する手がかりが得られます。
そして、ダークマターの正体が分かれば、宇宙創成メカニズムの理解が大きく進展すると考えられます。
井原市美星町出身の天文学者 國立中興大學 橋本さんでした。
ソラジオトークfrom OKAYAMAへようこそ 星空を守る人 国立天文台 平松です!
今回のテーマ、「最近急激に増えて天文学者を悩ませているものは」についてでした。
私は、国立天文台 天文情報センター周波数資源保護室に所属する天文学者です。
専門は星形成・電波天文学で、現在は「天文学の観測に適した環境を守る」という仕事を進めています。
最近急激に増えたと言えば、人工衛星です。
人工衛星とは、主に地球の周り(軌道上)を公転しながら、いろいろな役割を果たしている人工物を指します。
天気予報に使われる気象衛星ひまわりはおなじみですね。
皆さんが普段使っているスマホの地図アプリやカーナビで自分の場所がわかるのは、測位衛星のおかげです。その他、通信衛星や放送衛星などが活躍しています。
人工衛星のなかには、肉眼で見えるものもあります。太陽の光を反射することで星のように輝いてみえるのです。
この人工衛星、最近では毎週のように打ち上げられていて、その合計はおよそ1万機。
何千機もの人工衛星を組み合わせて、地球のどこでもインターネットに繋げるようにしたり、将来的には携帯電話と通信したりすることが考えられています。こうした仕組みを、衛星コンステレーションと呼びます。
コンステレーションとは、星座を意味する英語の単語。たくさんの人工衛星がグループになって一つの役割を果たすので、この名前がついています。
人工衛星の数は今後もどんどん増えていき、2030年ごろには今の10倍、10万機になるともいわれています。
多すぎる人工衛星が様々な問題を引き起こすこともあります。そのひとつは、人工衛星の光が天体観測の写真に写りこんでしまうこと。
天体写真に写りこんでしまったら、とっても遠くの星の光がかき消されてしまうかもしれません。
さらに、人工衛星が出す電波によって、遥か彼方の宇宙から届く電波の観測に悪影響が出てしまうかもしれない、と心配されています。
もちろん、人工衛星は今の私たちの生活になくてはならないものです。
能登半島地震でも、通信ができなくなってしまった場所で人工衛星を使った衛星通信が活躍しています。
便利な人工衛星が活躍しながら、天文観測も続けられる。そんな、ふたつが共存できる環境を作るために、人工衛星を運用する企業の方々とも相談を続けています。
例えば、天文学者の世界的な集まりである国際天文学連合では、人工衛星から天文学を守るための新しい組織を作りました。
天文学者だけでなく、人工衛星を運用する企業の方たちも参加していて、どうやったら天文学への影響を減らせるか議論をしています。
また、世界の電波の使い方を決めている国際電気通信連合でも、衛星コンステレーションから電波天文学を守るための議論が始まりました。
世界のいろいろな人たちに受け入れてもらえる国際的なルールを作ることも、私の仕事のひとつなのです。
国立天文台では、いろいろな望遠鏡やスーパーコンピュータを使って宇宙の謎に挑んでいます。
ホームページ、X、フェイスブック、YouTubeなど、いろいろなところで情報をお届けしていますので、ぜひチェックしてみてください。
国立天文台 https://www.nao.ac.jp/
X(旧twitter) https://twitter.com/prcnaoj
Instagram https://www.instagram.com/naoj_pr/
Youtube https://www.youtube.com/user/naojchannel
以上解説は、星空を守る人 国立天文台 平松でした。
恐竜の絶滅のように、ある期間に大量の生物が絶滅する現象は、地球の歴史の中で何度も起こっています。
他の絶滅も放送分でお話した星雲遭遇で説明できるかもしれません。
また、遠く昔、24億から22億年前と7億7千万から5億5千万年前には、地球が赤道までガチガチに凍ってしまうスノーボールアースという出来事がありました。
近年の研究によると、この時期は、私たちの住む銀河系内の星形成がさかんで、たくさんの星雲が銀河系内に分布しており、太陽系がそれらの星雲にたくさん遭遇したことによる寒冷化がスノーボールアースの原因と考えられています。
そして、最後のスノーボールアース終了から4億8800万年前までは、先ほどのさかんな星形成の状態から、現在の銀河系になるまでの期間で、このときも高頻度の星雲遭遇があり、何度か大量絶滅を繰り返します。
大量絶滅はその後の進化を加速されることが知られており、この時期の大量絶滅が、後のカンブリア大爆発とよばれる生物種の爆発的な進化につながります。
つまり宇宙で起きたことが地球の生物の進化に影響を与えていることになります。
と、ここまで、星雲遭遇についてお話してきましたが、とは言え、隕石衝突も大変な自然災害であることは間違いありません。
2013年にロシアのチェラビンスクの隕石落下を記憶している人もいらっしゃるかもしれません。この隕石落下で多くの負傷者がでました。
隕石は、地球に落ちてくる石ですが、そのもとは宇宙にある小惑星です。
私が所属している日本スペースガード協会も岡山県井原市美星町でこのような小惑星の監視をしています。
望遠鏡を使って、何度か時間をあけて小惑星を観測すると、小惑星の通り道がわかります。
これは、現在だけではなく、過去も、そして未来もわかります。
よって、将来的に地球に衝突するのかどうかということもわかります。
よくある質問で、実際に地球に衝突するかもしれないとわかったらどうするのか?と聞かれることがあります。
先ほどの小惑星の監視や、衝突回避の手段など、天体の衝突から人類を守る活動をプラネタリーディフェンスといいます。
小惑星の通り道さえわかれば、かなり前から地球に衝突するかどうかがわかります。
そのだいぶ前から、小惑星を少し押して、通り道をずらしてあげるだけで、どんどん最初通るはずだった道からはずれて、地球への衝突を回避することができます。
サッカーやバスケットボールでゴールに入りそうなシュートに対して、シュートが放たれたタイミングでちょっと指先をあててゴールからはずしてやるような感じです。
では実際に、どうやって小惑星をちょっとだけ押すのか?
ということですが、いろいろな方法があります。
その一つに小惑星に何かをぶつけて、ずらすという方法があります。
2021年にはNASAが実証実験を行っており、小惑星ディディモスの周りをまわっている衛星ディモルフォスに探査機をぶつけて、その動きの変化を確認しました。
また、先ほどから、隕石の脅威についてお話をしましたが、一方で隕石は、私たちの太陽系の歴史を語る重要なサンプルでもあります。
私たちは隕石の分析や望遠鏡による小惑星の観測などで、太陽系を理解してきました。
望遠鏡で宇宙を見れば太陽系のどこに小惑星があるかがわかります。
ただ、どのような物でできているかについては、隕石の分析ほどは詳しくはわかりません。
一方、隕石の分析は、どのような物でできているかについては良くわかりますが、それが太陽系のどこにあったのかが、わかっていないものがほとんどです。
探査機によるサンプルリターンは、その両者の良い点を持ち合わせていますが、今のところ、行くことができる小惑星には限りがありそうです。
それぞれの良い点を生かしながら我々の住む太陽系の歴史の解明も進めばと思います。
以上解説は、日本スペースガード協会 二村さんでした。
ソラジオトークfrom OKAYAMAへようこそ 岡山理科大学 長尾です。
今回のテーマは、「暗黒物質」でしたね。
放送分で解説したように、宇宙のなかで、私達の身の回りにある物質と同じ種類のものは実は少数派。
宇宙にはその約5倍、暗黒物質と呼ばれる目に見えない正体不明の物質が存在していることがわかっています。
暗黒物質の存在は、1930年代に銀河団の運動から提唱され、その後も多くの観測から確かめられてきました。
では、暗黒物質は、「何物なのか」というと、残念ながらわかっていません。
私達の体は小さく分解していくと細胞、分子、原子…と分解できていきますが、暗黒物質は原子とはまったく違った性質をもっています。
そのため、その正体は未発見の素粒子ではないかと考えられています。
宇宙の歴史の中で、暗黒物質は非常に重要な存在です。
宇宙誕生直後のわずかな揺らぎが宇宙全体の暗黒物質の濃淡を作り、それが重力によって周りのガスを集めながら大きく成長していきました。
宇宙ができて10億年ほど経った頃、それが銀河団や銀河など今の宇宙にある基本的な構造になっていったと考えられています。
暗黒物質がなければ銀河団も銀河も私たちも生まれていなかったのです。
そのため、暗黒物質は私達のお母さんと言われることもあります。
さて、暗黒物質は未発見の素粒子でできていると考えられていますが、そもそも素粒子とは、なんでしょうか?
私達の体や身のまわりのものは、分解していくと分子、原子、原子核…と小さい単位に分けられます。
分解していって最後に出てくる、これ以上分解できない粒子のことを素粒子と呼びます。
ちなみに、人間の身体や身のまわりのものは、分解してくとクォークと呼ばれる素粒子に辿り着きます。
宇宙にある物質はすべて、細かく分解していくと素粒子に辿り着くので、素粒子が何種類存在するのか、どのような力が働くのか、どのような性質をもっているのかを調べることは、実は宇宙を研究するうえでとても重要です。
みなさんに身近な素粒子といえば、さきほどお話した身の回りの物質のもととなっているクォーク、それから、星や太陽から届く光も、実は光子と呼ばれる素粒子です。
また、電気の正体である電子も、もっとも身近な素粒子です。
素粒子の1つ、ニュートリノは、これまでに2つのノーベル物理学賞を日本にもたらして話題になったので、聞いたことのある人も多いかもしれません。
実は、日本出身で、素粒子に関する研究でノーベル物理学賞をとった人はこれまでに7人と非常に多く、日本の得意とする分野の1つなのです。
暗黒物質が宇宙に存在することはさまざまな観測結果から確かなのですが、やっぱり実際に捕まえて、直接その性質を調べてみたいですよね。
これまでに3つの方法で、暗黒物質粒子を捕まえようという試みが行われてきました。
1つ目は、
宇宙から地球にやってくる暗黒物質が実験室の検出器に当たって出すわずかな信号を捉えるというもの。
暗黒物質は極めてすり抜けやすいのですが、ごくまれに原子などに当たり、そのときの反応を利用して暗黒物質を見つけることができるのではと期待されています。
これが一番直接的に暗黒物質を見つける方法で、検出のための様々な技術が研究開発されています。
2つ目は、
宇宙にある暗黒物質粒子が崩壊したりぶつかったりするときに出る特徴的な宇宙線を、天文観測衛星で探す方法です。
このときに出る宇宙線のエネルギーは、暗黒物質粒子の重さによって決まるので、暗黒物質を見つけるだけでなく重さについてもヒントが得られるでしょう。
3つ目は、
粒子加速器を使って暗黒物質粒子を作る方法です。
粒子加速器とは、粒子を加速してぶつけることで新しい素粒子を作り出すことができる装置です。世界最大のものは直径8.6kmの円形、だいたい岡山県でいうと岡山駅から中庄駅を直径とする円くらいの巨大な装置です。
ちなみに、日本で初めて粒子加速器を作ったのは岡山県出身の仁科芳雄博士で、その後の物理学に与えた影響の大きさから日本の物理学の父とも呼ばれています。
宇宙からやってくる暗黒物質をつかまえるにはごくわずかな信号を捉えなければいけないのでご家庭では難しいのですが、宇宙からは暗黒物質以外にも、陽子をはじめとする宇宙線や電磁波、ニュートリノ粒子、重力波など様々なものが地球にやってきます。
このうち宇宙線は、地球の大気に当たってたくさんの二次宇宙線を地上に降らせます。
実はこの二次宇宙線は、ご家庭でもわりと簡単に見ることができます。
ドライアイスと消毒用アルコールを使ってつくることができる霧箱という装置を使うと、装置中の霧に二次宇宙線が当たって、線香の煙のようにふわっと白い線が見えます。
インターネットで検索すると霧箱の作り方はすぐ出てきますので、ぜひ挑戦してみてください。
二次宇宙線には様々な素粒子が含まれていますが、地上まで辿り着くものの多くはミューオンと呼ばれる、電子の仲間の素粒子です。
宇宙から降ってくるミューオンを利用して、レントゲンのように火山やピラミッドなどの内部構造を調べる研究も最近はさかんになっています。
以上解説は、岡山理科大学 長尾でした。
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